きょうだいが親とサービスプロバイダーに知っておいて欲しいこと

原文・著作権:きょうだい支援プロジェクト(The Sibling Support Project)
原文の初版:2002年6月18日
二次的著作物・著作権:きょうだい支援を広める会

この文章を印刷物に転載してご利用になってもかまいませんが、必ず次の条件を満たしたうえでご利用ください。
 1)必ず原文と訳文の両方の著作権を明記すること。
 2)転載した発行物を、米国きょうだい支援プロジェクトのエミリー・ホールさん、および「きょうだい支援を広める会」に各1部ずつ送ること。
ご不明の点がありましたら、きょうだい支援を広める会まで、メールでsiblingjapan_contactアットマークgooglegroups.com(アットマークは半角の@に変更してください)ご連絡ください。
 
2019年3月に米国きょうだい支援プロジェクト関連の資料の二次的著作物(翻訳冊子)の管理を「きょうだい支援の会」から「きょうだい支援を広める会」に移管し、このページも2020年5月にきょうだい支援を広める会に移管しました。

 アメリカ合衆国には、健康上、発達上、あるいは精神的に問題を抱えている人が600万人以上います。これらの人々のほとんどに、健常のきょうだいがいます。きょうだいは、次にあげる理由からだけでも、あまりに重要で無視することはできません。

1)きょうだいは、誰よりも長く特別なニーズのある家族と人生を共にします。親が亡くなり、特殊教育のサービスが遠い思い出になった後も、きょうだいはそこにいます。支援と情報が提供されれば、きょうだいは兄弟姉妹が幼児期から老年期まで尊厳のある人生を送るのを手助けできます。

2)一生を通じて、きょうだいは、特別なニーズのある子どもの親が経験する不安や問題の多くを同じように経験します。孤独、情報の必要、罪悪感、将来に対する不安、介護負担などです。きょうだいはまた、きょうだいに特有の問題にも直面します。憤慨(恨み)、同世代の人との問題、当惑(恥ずかしさ)、よい成績をとらなければという圧力などです。

 

 特別なニーズのある兄弟姉妹の人生において、きょうだいは重要で一生続く役割を担うにもかかわらず、家族支援を謳っている機関でさえ、きょうだいを無視することが多いのです。きょうだいは、サービス提供システムの中で、文字どおり、あるいは比喩的な意味での待合室にたびたび取り残されていますが、もっとよい待遇を受けて当然です。本物の「家族支援」機関の配慮とサービスは、きょうだいが「家族」の定義に含まれたときに成功するでしょう。

 

 きょうだい支援プロジェクトは、シブネット(プロジェクトが主宰する障害がある人たちの大人のきょうだいのためのメーリングリスト)で、きょうだいが、親、他の家族員、サービス提供者に知っておいて欲しいと思うことに関して、話し合いをリードしました。下記は、シブネットのメンバーによって話し合われたテーマときょうだい支援プロジェクトが勧める事柄です。

1.自分自身の人生をもつ権利。
一生を通じてきょうだいは、特別なニーズのある兄弟姉妹の人生で、多くの異なった役割を担うでしょう。きょうだいが兄弟姉妹の世話に貢献するかどうかに関係なく、きょうだい自身の人生への基本的権利は、常に忘れられてはなりません。率直でオープンな話し合いなしに、親とサービス提供者は、健常のきょうだいが担う責任について、決めてかかってはなりません。「私たち抜きに私たちのことは決められない(障害者の自己擁護において人気のあるフレーズ)」はきょうだいにも同じように当てはまります。自己決定は、結局のところ、きょうだいを含む誰のためにでもあるのです。

2.きょうだいの悩みに気づくこと。
親と同じように、きょうだいは、兄弟姉妹の特別なニーズによる影響に対して、広い範囲の感情-しばしば相反する感情をもちます。これらの感情を、親、他の家族員、サービス提供者は予期し、認識しなければなりません。ほとんどのきょうだいが、障害のある家族員と最も長い関係をもちますから、これらの悩みは時とともに変わります。親とサービス提供者は、きょうだいの一生続く、そして常に変化する悩みについてもっと学ぶべきです。

3. 健常のきょうだいへの期待。
家族は、子どもたち全員に対して高い期待をする必要があります。しかし、健常のきょうだいの中には、非現実的な高い期待を自ら設定して、兄弟姉妹の障害に反応する人もいます。そして、兄弟姉妹の特別なニーズを何とかして補償しなければならないと感じる人もいます。親は、何を期待するかはっきり伝え、無条件に支援することで、健常の子どもたちを手助けることができるでしょう。

4. 健常のきょうだいの普通の行動を予測すること。
親が見張っているのは難しいですが、からかい、悪口、ケンカ、そして他の形の争いは、ほとんどのきょうだい間で普通のことです-きょうだいの一人に特別なニーズがある場合でも。親はきょうだい同士の無情さにぞっとするかもしれませんが、こうした争いの多くは、通常の社会的成長のために有益な部分になり得ます。ときどきケンカをするきょうだいと一緒に育つダウン症の子どもは、おそらく一人っ子として育つダウン症の子どもより、大人として地域生活に向かい合う準備ができています。どれくらい適応可能か、どれくらい発達上適切かにかかわらず、きょうだいの一人に健康上または発達上の特別なニーズがあるとき、典型的なきょうだい間の争いは、(健常のきょうだいにとっては)罪悪感として終わりがちです。争いが起こると、多くのきょうだいに送られるメッセージは、「やめなさい。あなたのほうが大きいんだし、強いんだし、もっとものごとをわかっていなければいけません。あなたが歩み寄るべきよ。」というものです。健常のきょうだいは、ほかの子どもたちと同じように、ときには粗相をし、兄弟姉妹に対して怒り、兄弟姉妹とケンカをして当然なのです。

5. 特別なニーズのある家族への期待。
家族が特別なニーズのある子どもに高い期待をもてば、みんなのためになります。大人になって、健常のきょうだいは、障害のある兄弟姉妹の人生において、重要な役割を担うことでしょう。親は、特別なニーズのある子どもたちが大人としてできるだけ独立できるように、技術の習得をいま手助けすることによって、健常のきょうだいを助けることができます。可能な範囲で、親は健常の子どもにやらせるのと同じように、家事や自己責任に関して特別なニーズのある子どもにも期待しなければなりません。同じように期待をすることは、独立を促すだけでなく、2種類のルールがあった-きょうだいのためのものと特別なニーズのある兄弟姉妹のためのもの-ときょうだいが表明している憤慨(恨み)を最小にします。

6. 安全な環境に対する権利。
きょうだいのなかには、行動障害のある兄弟姉妹と暮らしている人もいます。また、すべての関係者が傷つきやすい状況において、自分の年齢のレベルや立場を超えて、自分のことや兄弟姉妹のことに責任を負うきょうだいもいます。特別なニーズのある家族員が重要なのと同じくらい、きょうだいも自分自身の個人的な安全を得て当然です。

7. 同じ立場の人と出会う機会。
ほとんどの親にとって、同じ立場の親と知り合うという恩恵を受けずに、特別なニーズのある子どもを「一人で」育てることなど想像もつかないことです。しかし、このことはごく普通にきょうだいには起こります。シブショップ、メーリングリスト(たとえばシブネットとシブキッズ)、そして同様の活動が提供するのは、親がペアレント・ツー・ペアレントプログラム(親のためのプログラム)や同様のプログラムから得るのと同じ意味の支援と確認です。親と同じように、きょうだいは、特有の喜びや悩みをもっているのは自分一人ではないということを知りたがっています。

8. 情報を得る機会。
一生を通じて、きょうだいは、兄弟姉妹の障害、その治療法、それに伴うさまざまなことに関する情報を-それは絶えず変化するものですが-必要としています。親およびサービス提供者には、積極的にきょうだいに役立つ情報を提供する義務があります。特定の障害や病気について、親や他の大人のための資料を提供している機関はどこでも、きょうだいと若い人たちのための資料も提供しなければなりません。

9. 将来に対するきょうだいの不安。
人生の早い時期から、きょうだいの多くは、来る日々に自分は兄弟姉妹に対してどんな義務を持つのだろうと心配しています。親は次のような方法で、健常の子どもを安心させることができます。特別なニーズのある子どもの将来設計をする。その計画を立てるときには、健常の子どもも関わらせ、その意見も聞く。予備の計画も考える。大人としてどれだけ兄弟姉妹に関わるかに対するきょうだいの姿勢は、時間とともに変化しうることを理解する。きょうだいが「輪に迎え入れられ」、自らの夢を追うことを親が賛成してくれると早くから知れば、将来の兄弟姉妹との関わりは、義務的なものでなく選択の結果になるでしょう。自分自身の幸福と障害のある兄弟姉妹の幸福のために、きょうだいは自分自身の人生に対する権利を与えられなければなりません。これには、大人として障害のある兄弟姉妹の人生に関わるかどうか、どのように関わるか、どの程度か、どういう形でか、どれぐらいの期間かということに関する発言権も含みます。

10. 息子と娘の両方を関わらせること。
通常、娘が老いていく親の世話をする家族員であるのと同じように、親がもはや特別なニーズのある家族員の世話をすることができなくなったときに、その世話をする家族員も通常、娘です。しかし、男きょうだいを含めたきょうだい間で、その責任を分配することができないかどうか真剣に探るべきです。

11. コミュニケーション。
親子の間で十分なコミュニケーションをはかることは、特別なニーズのある子どもをもつ家族では特に大切です。夜間講座で「積極的傾聴」を学べば、家族全員のコミュニケーションを高めるのに役立ちます。また『子どもが聴いてくれる話し方と子どもが話してくれる聴き方』(*1)や『憎しみの残らないきょうだいゲンカの対処法―子どもを育てる心理学』(*2)(どちらもアデル・フェイバとエレイン・マズリッシュ共著)などの書物からは、子どもとコミュニケーションをはかるのに役立つアドバイスが得られます。


訳注*1
原題:How to Talk So Kids Will Listen & Listen So Kids Will Talk
   Adele Faber, Elaine Mazlish 著
邦訳:『子どもが聴いてくれる話し方と子どもが話してくれる聴き方』
アデル・フェイバ&エレイン・マズリッシュ著、三津乃リーディ&中野早苗翻訳
1995.10.4初版発行 1996.11.18第2刷発行、きこ書房


訳注*2
原題:Siblings Without Rivalry: How to Help Your Children Live Together  So You Can Live Too
Adele Faber, Elaine Mazlish
邦訳:『憎しみの残らないきょうだいゲンカの対処法―子どもを育てる心理学』
アデル・フェイバ&エレイン・マズリッシュ著、三津乃リーディ翻訳
1998、きこ書房、ISBN: 4877715029

12. 親と一緒の一対一の時間。
自分が一人の人間として大切にされているということを、親のふるまいや言葉から感じることが子どもには必要です。親が忙しいスケジュールをやりくりして、健常の子どもと行きつけのハンバーガショップでハンバーガーをほおばったり、商店街でウィンドウショッピングしたりすれば、親はその子のためにも「存在している」というメッセージが伝わり、広範囲にわたる話題について話すよい機会にもなるでしょう。

13. どの子についても、その子が達成したこと、人生の重要なできごとを祝うこと。
特別なニーズのある子どもを置いて出かけられないので、親が高校の卒業式に来なかったきょうだいに-総代であったときでさえも-、長年の間に数多く出会いました。障害のある兄弟姉妹のニーズのために、結婚式の計画を規定されたきょうだいたちにも出会いました。ひとりの子どもの特別なニーズが、他の子どもの達成したことや人生の重要なできごとを覆い隠してはなりません。レスパイトサービスを探し、融通を利かせようと努力し、創造的な解決策を求めれば、その家族は、すべての家族員の達成を祝うことを確実にできるでしょう。

14. 親の考え方は、実際の障害より重要。
親が子どもの障害をどう捉えているかのほうが、実際の障害より、健常のきょうだいが適応するかどうかに大きな影響を与えるということを親は忘れてはいけません。親が自ら、支援、情報、レスパイトを求めるとき、健常の子どもたちにとって、困難な状況にうまく適応する能力、健全な態度、行動のモデルとなります。

15. 「家族」という定義にきょうだいを含むこと。
教育機関、保健医療機関、社会福祉事業機関の多くが、家族のためのサービスを提供したいと明言していますが、特別なニーズのある人と最も長い関係をもつ家族員であるきょうだいを無視し続けています。きょうだいが受けるべき配慮とサービスをきょうだいに提供するとき、関係機関は「親」のためではなく「家族」のためのサービスを提供していると公言できます。

16. 積極的にきょうだいに手を差し伸べること。
親や諸機関の職員は、多くの情報を与えてくれる個別教育プラン(IEP *1)、個別家族サービスプラン(IFSP *2)、移行期のための計画に関する会議(*3)、病院での診察に、きょうだいを(強制しないで)参加させることを考えるべきです。きょうだいは本格的な質問をよくしますが、サービス提供者ならこの質問に答えられるでしょう。さらにきょうだいは十分な情報に基づいた意見や見解をもっており、子どものチームに好ましい影響を与えることができます。

訳注*1)IEP(Individualized Education Plans) アメリカの法律Individuals with Disabilities Education Actに関連するプログラム。障害のある子どもにとって、最適な教育条件を整えるために、先生、親、療法士などが集まって話し合う。


訳注*2)IFSP(Individualized Family Service Plans)。


訳注*3)高等学校を卒業した後のことを決める会議

17. きょうだいとしての人生について多くを学ぶこと。
家族に関心をもつ人は、きょうだいとその悩みにも関心をもつべきです。親とサービス提供者は、シブショップを行う、きょうだいによる公開討論会を主催する、きょうだいによって書かれた本を読む、きょうだいについて書かれた本を読む、といったことを通して、「きょうだいとしての人生」について、より多くを学ぶことができます。きょうだいによる公開討論会を催す際のガイドラインは、きょうだい支援プロジェクトが提供していますし、シブショップ・カリキュラム(訳注:マイヤー氏著の『Sibshops』のこと)にも載っています。きょうだいに関連した本の文献目録は、きょうだい支援プロジェクトのホームページにあります。

18. きょうだいのための地域プログラムを作成すること。
あなたの住んでいる地域にペアレント・ツー・ペアレントプログラム(親のためのプログラム)、あるいは親を支援するための同様の活動があるなら、なぜ、きょうだいのために同じものがないのか、と問うのが公平というものでしょう。親同様、きょうだいも理解し合える人たちと話をすることから得るものは大きいのです。シブショップや、幼年期、学齢期、思春期、成人期のためのプログラムの数は(アメリカでは)増えてきています。きょうだい支援プロジェクトは、200以上のシブショップやその他のきょうだいプログラムに関するデータベースを管理しており、地域できょうだいプログラムを立ち上げるためのトレーニングを行い専門的な援助をしています。

19. 関係機関の諮問委員会にきょうだいを入れ、そして、家族に関する方針の中にもきょうだいを入れること。
委員会にきょうだいが参加するということは、ユニークで重要な観点が委員会に加わるということであり、またその機関がきょうだいの福利に関心を寄せていることの現われともなるでしょう。方策を立てる際、きょうだいが果たす役割が重要であるという考えが根底にあれば、その機関の家族に関する取り組みの中に、必ずきょうだいの悩みや貢献も含まれることになるでしょう。

20. きょうだいのためのサービスに資金を提供すること。
きょうだいが与える影響ほどには、統合学級の同級生たちは障害のある子どもの社会的発達に影響を与えないでしょう。きょうだいは障害者の終生の発達ロールモデルとなるでしょう。前述したとおり、きょうだいがほかの誰よりも長く兄弟姉妹とともに人生を生きるでしょう。-親よりも、そして間違いなくどのサービス提供者よりも長く-。ほとんどのきょうだいにとって、かれらの将来と特別なニーズのある兄弟姉妹の将来とは、否応なく絡まっています。それにもかわらず、きょうだいが生涯を通じて必要とする情報、技術、支援を得ることを手助けするプロジェクトに、資金提供はほとんどありません。関係機関は、障害のある人々の福利について個人的な関心を寄せ、また親がもはや擁護できなくなったときに兄弟姉妹を擁護するであろう家族員に投資するべきです。ある女きょうだいが書いたように、「親が世話をすることができなくなったとき、私たちは兄弟姉妹の世話役になります。障害のある人々の福祉に関心をもつ人は誰でも、私たちにも関心をもつべきです」。

Sibling Support Project
Emily Holl, Director
A Kindering Program
16120 NE 8th Street
Bellevue, WA 98008
425-362-6421
emilyholl @siblingsupport.org
www.siblingsupport.org

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