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きょうだいの学校でのウェルビーイングと学業達成 Sibling wellbeing and attainment at school

更新日:2021年11月5日

クラスに2人は「きょうだい」がいると推定されています。障害児,教育で特別な配慮が必要な子,あるいは重大で長期にわたる病気の子と暮らしているきょうだいです。多くの生徒はきょうだいとして認識されておらず,きょうだいのニーズは見落とされていて,その結果学校でのウェルビーイングや学業達成に問題が起きています。


「わたしの先生が,私の妹ケイティ,言葉が話せなくて自閉症の妹のことを知っていたなら,学校はもっとずっと楽なところだったと思います。わたしは妹と同じ部屋を使っていました。妹が夜よく眠らない日は,わたしの眠りも分断されました。そういう日の翌日は授業に集中するのが難しかったです。宿題をするときは走り書きをするのが普通でした。家の状況が大変なときは,自分の感情を抑えるのが大変でした。学校で助けが欲しいことや配慮が欲しいことがよくありましたが,誰もそのことを知りませんでした。」 ローラ,きょうだい




●きょうだいは傷つきやすい集団です

きょうだいは,孤立しやすく,いじめを受けやすいです。きょうだいは,同年代の他の子どもと比べ,世間の偏見,家庭の崩壊,死別を経験する可能性が高いです。

英国のヤングケアラーの半分以上が障害児のきょうだいで,どのきょうだいも学齢期中にヤングケアラーとなり得ます。

障害児のきょうだいの10人に4人は貧困です。

障害児の家族に対するサービスのカットによって,障害がきょうだいに与える悪影響が増えてきていて,地域のグループやCAMHS(※)のサービスを通してきょうだいが時機を得たサポートを得るための紹介できる選択肢が少なくなってきています。

忍耐力,寛容さ,親切さといったきょうだいがもっているポジティブな面を,学校側が認識したり称えたりすることはめったにありません。


※訳注:CAMHSは英国の児童青年精神保健サービス(Child and Adolescent Mental Health Service)のこと。英国ではCAMHSが適正に供給されることを目指して、ニーズのレベルとそれに対応するサービスを階層化する方向性が提案されている。

【参考文献】子どもの虹情報研修センター(2007)「イギリスにおける児童虐待の対応視察報告書」




●課題をもつリスクが最も高いきょうだいたち

・きょうだいをケアするヤングケアラー

例:兄弟姉妹のてんかんを母親に知らせることができるように、兄弟姉妹と同じ部屋に眠るきょうだい。

兄弟姉妹のケアをするヤングケアラーは、GCSE(※)の成績が有意に低く、16歳から19歳の間に国全国平均よりニート「NEET:教育機関に所属せず、雇用されておらず、職業訓練に参加していない者」になる傾向があります。


※訳注:GCSEはGeneral Certificate of Secondary Educationの略称で、義務教育終了時に中学生が受ける中等教育終了試験のこと。英国の義務教育は5歳から16歳、日本の小学校にあたるプライマリーが6年間、中学校にあたるセカンダリーが5年間の計11年間。日本では高等学校に入学するためには一般的に入学試験を受けるのに対し、英国ではGCSEの成績を基に入学する学校を決める。


・高度行動障害がある子どものきょうだいたち

例:自閉症で高度行動障害のある兄に,仕上げた宿題を破かれるなど常に宿題を壊されるきょうだい。

米国での最近の大規模試験では,通常の子どもたちと比べ,障害児のきょうだいは対人関係,精神心理学的なウェルビーイング,学業成績,および余暇の利用に関し,重大な課題をもつ可能性がおよそ3倍も高いという結果が出ました。

障害児の長期ケアとサポートを担うために,自分自身の就職や進学が制限される10代後半のきょうだいたちもいます。




●きょうだいの学びにおける障壁

障害児,教育で特別な配慮が必要な子,あるいは重大で長期にわたる病気の子のきょうだいは,学びや学業達成に対する障壁に直面することがあります。これらの障壁は,学歴や上達における課題につながることがあります。これらのことを認識していれば,教職員はきょうだいが抱えている課題に気づき,それを取り除いたり減らしたりするために行動を起こすことができます。




●きょうだいの学びにおける障壁の原因

・集中力が足りない

睡眠が妨げられる、家庭で過大で不適切なケアを担っている、自分の兄弟姉妹のウェルビーイングを心配している、苛められている、救急を経験していることから来る不安、親に対するケアが必要なことから来るニグレクト。


・授業に参加できない時間

障害児のための送迎バスなどを親が待っているために学校に遅刻、家庭でケアを手伝っている、睡眠が妨げられた夜の翌日は睡眠を必要としている(居眠りしてしまう)、学校で障害児を助けるよう求められる


・生徒と教職員との関係が悪い(薄い)

学校に遅刻したり宿題をやってこなかったりしたことで罰せられる,障害児に対する教職員の無神経さ,障がい者差別やいじめが放置されている,きょうだいとしての経験を学校側が認識していない


・宿題を仕上げることができない

障害児のケアのため,親が健常児の宿題をサポートできない,障害児が宿題の邪魔をしたり,壊したりする


・感情的な課題および行動上の課題

死別反応,障害児への注目に対する嫉妬,怒り,親の悲嘆・苦悩をしばしば経験する,孤独感,障害児の行動を真似する,家庭の崩壊,親からの注目がなかったり,ないと感じていたりする,攻撃的行動をとる障害児に傷つけられる,兄弟姉妹の状態を理解していない,世間の偏見を経験する,障害児や病児の状態やニーズの突然の変化


・家庭の外での機会が制限される

家族の財源が限られる,家に友人を連れてくるのが難しい,ケアを手伝うことにより(自由な)時間が減る,障害児をケアする必要があるため,親がきょうだいを放課後活動に連れていけない,家族を含めてできる活動がない


Sibsはあなたが学校でこれらの生徒を特定してサポートするのを手助けすることができます。もっと詳しく知りたいときにはschools@sibs.org.ukまでご連絡ください。




著作権について

原文:Sibs 日本語版:きょうだい支援を広める会

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